2016.5.16 

あしたのチーム総研主席研究員 田中道昭先生レポート

『ミッション経営が競争優位となる根源的分岐点とは何か?』第3弾
 

 

 これまで2回に渡り、ミッションの概念について述べてきた。今回はマーケティング戦略という観点からミッションの優位性、必要性を考えていく。

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マーケティング3・0を可能にするミッションの重要性

 マーケティングの神様と呼ばれているフィリップ・コトラーが新時代のマーケティングとして提唱しているのがマーケティング3・0という概念である。このマーケティング概念において、コトラーはミッションの重要性を説いている。

 

 コトラーによると、マーケティングは、大きく3つの段階を踏んで発展していくと言う。

 

 まずマーケティング1・0は工業化時代。工場から生み出される大量の製品を顧客に一方的に売り込むマーケティングの段階を言う。この時代の製品は基本的で画一的なものが多く、いわゆる大量生産大量消費型。まず企業が作った製品ありき。それをいかに消費者に購入させるか。大量生産によって価格を下げることで、多くの購買者に購入を促すという、シンプルなマーケティングだった。

 

 次のマーケティング2・0の時代は、いまの情報化社会の中におけるマーケティングである。マスメディアが発達し、十分な情報を持つようになった消費者は、自らの嗜好と目的に合わせて製品を選択する。消費者の嗜好は細分化し、マーケティングはそれに合わせてより複雑な対応を迫られる。STPや4P、4Cの概念など、今日のマーケティングの基本的な概念が生み出されたのもこの段階である。

 

 マーケティング1・0が製品中心のマーケティングであったのに対して、マーケティング2・0は顧客志向のマーケティングだ。顧客がどんな製品を望んでいるのかを分析し、それに対応した商品を作り売り込む。ただし、その顧客志向は、あくまでも企業が製品やサービスを、消費者にいかに購入させるかという一方的な視点に立っているもの。消費者は企業にとって受動的なターゲットであるという点では、マーケティング1・0と本質的に変わりがない。それに対して、マーケティング3・0の時代が到来していると、コトラーは説く。

 

 マーケティング3・0とは、消費者自身が主体的に価値を作り出していく時代。背景にあるのがツイッターやフェイスブック、YouTubeなどのソーシャルメディアの発達だ。ごく普通の市民が、マスメディアに劣らない発言権を持った時代だ。それによって消費者の意見や感想が、ストレートに社会に広がるようになってきた。すると、これまでのような、消費者を一方的なターゲットとして捉えたマーケティングではなく、消費者と企業がお互いに協働しながら価値を作り出していくマーケティングに変わっていかざるを得なくなる。消費者自身も、もはや単なる「消費」者ではなく、クリエイティブに主体的に商品やサービスを主張し、生み出していく時代になっていく。

 

 さらに、グローバル化が進み、世の中が広く開かれることによって、これまでの安定した国家や社会の枠組みが揺らぎ始めてくる。すると国家のアイデンティティ、一人ひとりのアイデンティティが危機に陥る。また貧富の差の拡大や、環境問題など全世界的な問題や危機が高まる時代でもあるのだ。

 

 これからの企業は、そのような不安に応えるため、これまで以上に社会的コーズ(大義、主張)が求められているとコトラーは言う。企業の社会的責任や社会的意義がクローズアップされてくるなかで、マーケティング3・0は、それらに対応した新しいマーケティングなのである。

 

 社会的コーズとしてすでに耳慣れているものに、地球温暖化や環境問題、貧困問題などがある。また、東日本大震災以後とくに自然エネルギー、再生可能エネルギーなどが注目されているが、これらの社会的コーズに積極的に関わり、態度を表明する企業が消費者の支持を得るようになってきている。たとえば自国の貧困撲滅を謳い、これまでの常識を覆す融資活動を実現したバングラディシュのグラミン銀行などは、その典型的な例である。

 

 マーケティング3・0を可能にする経営とは、どんな経営なのか? コトラーはそれこそがミッション経営だと説く。ミッションとは企業の存在意義であり、社会的な使命や役割を明確にしたもの。これからの消費者は単に商品やサービスを支持するのではなく、そのような企業の精神やマインドに共感し、支持をするようになる。逆にミッション意識がなく、自社の利益のみを追求する企業は支持を失う。

 

 社会の変化により、消費者のニーズがさらに高度化し、企業自体がミッション・ビジョン・バリューをもち、それらに本気で取り組む全人的存在であり、かつその提供する商品にもそれらが練り込まれていることを求めているようになっているということ。これがマーケティング3.0の意義なのだ。

 

 時代の流れ、マーケティングの変化……、ミッションは、これからの経営になくてはならないものになってきているのである。

 

 

 ここまで、3回を通じてミッションの意義について述べてきた。次回からは実際にミッション経営をしていくうえで必要な要素について、考えを示していきたい。

 

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4億1010万円(資本準備金含む)
設立
2008年9月25日
HP
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