『ミッション経営が競争優位となる根源的分岐点とは何か?』第2弾

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前回はミッションの概念についてお伝えした。今回はより普段のビジネスに当てはめて、ミッションの概念を整理してみることにしよう。

 

まずは前回のレポートを読む

 

ミッションは企業の価値観の最上位概念

企業には経営理念や経営方針、業務目標や日々の行動指針まで、さまざまな価値基準、行動規範が設定されている。これらの概念と、ミッションとの関係をはっきりさせておくことが必要だろう。

ミッションとは、会社の存在意義であるということは前にも述べた。ミッションとは、その企業が社会に対して持っている「使命」であり、同時に「自分たちはこれをやらなければ会社として活動する意味はない」とさえ言える本質的なものだ。だからこそ、あらゆる経営方針や目標、行動指針も、当然これを基本にして生まれてくるべきものだと言えるだろう。

ミッションとは、経営を執り行う上でも、社員が会社の一員として活動する上でも、一番大切で根源的な価値基準だということなのである。

 

この関係をわかりやすく理解するために、NLPニューロロジカルレベル・モデルを参考にしてみよう。NLPニューロロジカルレベル・モデルとはロバート・ディルツという米国の研究者が提案した思考と情報処理の枠組みである。このモデルによれば人の思考と情報の枠組みは一番下の「環境」から、一番上の「使命・自己認識」まで5つの段階に分かれる(図2参照)

 

一番下の「環境」とは、自分を取り巻いている状況や場所などで、Where、Whenに相当するものである。自分がいつ、どこでどうしているかということである。2段目が「行動」でWhatに相当する概念であり、どんな行動を取るか、何をするかということである。3段目が「能力・戦略」で、Howに相当する概念であり、どうやって行動するのか、その方向性や可能性、能力にあたるものである。4段目は「信念・価値観」で、Whyに相当する概念であり、自分が大切にしていること信じていることを指している。そして最上位が「使命・自己認識」、Whoに相当する概念であり、自分の存在理由、生きる目的や使命という部分になるのだ。

人の思考のレベルはこのような5段階に大きく分けられていて、この枠組みの中で情報を処理し行動するというのがNLPニューロロジカルレベル・モデル理論だ。

 

たとえば、ある人物が飛び込みで営業活動をすることになったとする。まず、いつ、どこのエリアのどんな家を回るかというのが、一番下のWhereの部分。次にどんな営業スタイルを取るか、こちらの商品の利点をわかりやすくプレゼンするのか、あるいは相手のニーズをひたすら聞くことから始めるのかといった行動が2段目のWhatの部分。その行動を可能にするために、どんな能力が必要なのか、自分自身の能力を考えたときにどんな方法が最も効果的かといった戦略を考えるのが3段目のHowの部分。4段目のWhyの段階はなぜ、そのような行動を取るのかということで、たとえば売上を上げるため、新規顧客を開拓するためなど、行動の目的を考える段階。そして最上段のWhoの段階は飛び込み営業をするということが、自分や自分を取り巻く環境の中で、どういう意味を持つのか、自分の存在意義を前提にして、一連の行動の意味や意義を捉える段階だ。

 

これを見てわかるのは、どの段階の行動を取るかは、人によって、レベルによってさまざまだということではないだろうか。

たとえば、入社したばかりでまだほとんど営業の経験がない新入社員の場合、第2段階の「どんな営業をするか」、第3段階の「そのために必要な能力や手段は何か」といった考えを持たずに、とにかく目の前の家に飛び込んで営業するかもしれない。このような人は、このモデルの最も下のレベルで行動していることになる。上司から言われたことをただ盲目的に作業としてこなすレベルだ。

これが2年、3年と、経験をある程度積んだ社員になれば、少なくともその仕事に必要とされるノウハウと自分の能力を分析し、どのような営業を、どのような地域に、どのような方法で行うかを考えて動くことだろう。第3段階の枠組みから仕事に取り組んでいるということになる。

さらに上の役職である課長や部長になれば、その営業活動が会社の中でどのような目的や意味があるかを考えるようになるだろう。たとえば部署としてどれくらいの売上を上げるためだとか、新規顧客をどれだけ増やすためなどといった、会社としての目的や目標を考えながら判断するようになる。これは第4段階から仕事を捉えているということになる。

最後には、自分の中でどのような価値を持っているのか、自分を取り巻く環境、すなわち社会の中で、どのような価値を持っているかまでさかのぼって考えられるようになる。飛び込み営業をすることで、自分の営業能力を高める。あるいは自分たちの商品を広めることで、社会に対して何らかの利益をもたらしたいなど、より広く根本的な視点から自分の行動を捉えるという人は、第5段階、最も上位の概念から仕事を捉えているということになるだろう。

 

これらのことから言えることは、より上位の段階から物事を捉えて行動している人ほど、行動に一貫性と統一性を保てるということだ。

第1段階で仕事をしている新人は、行きあたりばったり、出たとこ勝負の営業をせざるを得ない。第2、第3と段階が上がるほどに、自分のやるべきこと、やらざるべきことが明確になっていく。第4段階、第5段階になれば、自分の軸が定まっているので、目の前の状況が変化しても、それほどブレることなく行動することができるはずだろう。

ディルツは、このモデルをそのまま企業経営にもあてはめられると考えた。

一番下の第1段階が日々の活動や、それによって達成される業績にあたる。第2段階が事業計画や事業活動、第3段階が経営戦略や事業戦略、第4段階が経営理念や経営方針、そして最上位の第5段階がミッションとなっているのだ。

ミッションとは、経営理念や経営方針よりもさらに上の、最上位の概念だということなのだ。

ちなみに、ここでいう経営理念とは、その会社の信念やモットーに近いものと考えて差し支えない。その企業や組織が大切だと考えていること、信じていることを指す。たとえば「顧客第一主義」だったり、「自由で斬新な発想を大切にする」など、その企業の基本となる考え方、信念や主義を指す。

ミッションとは、そのような理念を必然的に生み出すところの、さらに上の概念である。たとえば「顧客の満足と幸福を実現し、社会の発展に寄与する」というミッションを持つ企業が、それを具現化するための信念や主義思想として「顧客第一主義」を唱える、というように対比される。

 

このように見るとミッションと企業理念、経営理念の違いと関係がはっきりするのではないだろうか。これまでの企業の多くは、このミッションと企業理念を混同して使ったり、ミッション的な要素が欠落していたケースが少なくなかった。あえてこのようにモデル化し、ミッションと経営理念、経営方針を分けることで、ミッションの優位性と大切さがわかってくる。本当のミッションが定まれば、その下の概念は自ずと定まってくるのだ。

 

個人に置き換えてみると、よりわかりやすいだろう。自分の使命、果たすべき役割が明確な人は、誰に言われなくとも自ら為すべきこと、為さざるべきことが認識できているものだ。為すべきことがわかっているから、どう行動するのが一番良いかも自ずと明確になる。そこから日々の行動や過ごし方も決まってくる。

企業も、本当のミッションが定まり、組織に定着していれば、経営理念も経営戦略も日々こなすべき仕事も自ずと定まってくるはずなのである。

 

なお、図3には、ミッションやビジョンから、経営戦略、マーケティング戦略、マーケティング戦術に至るまでの戦略フィロソフィーの全体構造を添付する。バリューは企業の経営者や社員に対する行動指針として機能するものであることから、ピラミッドの底辺を構成していることに留意していただきたい。

今回は、NLPニューロロジカルレベル・モデルに当てはめて整理して、ミッションの優位性と大切さについて述べた。本当のミッションが定まり、組織に定着していれば、経営理念も経営戦略も日々こなすべき仕事も自ずと定まってくるはずなのである。

企業組織におけるミッションの優位性についてご理解いただけたところで、次回は新しいマーケティング概念におけるミッションの重要性についてお伝えしていく。