中小企業の”事業承継”の実態と対策について

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はじめに

2016年に休廃業・解散した企業数が過去最多を更新した。一方で倒産件数は減っているという傾向から、後継者難や人手不足など、人事の問題から自主廃業を選ぶケースが増えているということができる。有効求人倍率の高さからも社会全体として人手不足が深刻化していることは明らかだが、とりわけ事業承継を考える企業にとって、人事は経営上の喫緊の課題である。


そこで注目したいのが人事評価制度である。実際に事業承継にあたって人事評価制度の整備に取り組む企業は多い。
本レポートでは、中小企業の事業承継の実態と、事業承継を支える人事評価制度について考察する。

1.事業承継のタイミングを迎える中小企業の現状

中小企業にとって、後継者難は深刻な問題だ。中小企業庁によると、今後5年間で30万以上の経営者が70歳になるにもかかわらず、6割が後継者未定の状態だという。また、70代の経営者でも事業承継に向けた準備を行っている経営者は半数にとどまる。事業承継のタイミングを迎えようとする多くの中小企業の存続・発展のために、中小企業庁は今後5年程度を事業承継支援の集中実施期間と定め、「事業承継5ヶ年計画」を策定した。日本経済が継続的に発展を続けていくためにも、企業を存続・発展させ、雇用や技術を次の世代へとつなげていくことが必要なのだ。

2.事業承継に対する企業の意識とは

企業の事業承継に対する意識について、帝国データバンクの調査結果を見てみよう。

事業承継についてどのように考えているか聞くと、「経営上の問題のひとつと認識している」と回答した企業が 57.5%と半数を超えて最も高い割合となり、「最優先の経営上の問題と認識している」という回答が13.6%と続いた。合計すると、約7割の企業が事業承継を経営上の問題として認識しているのだ。

3.事業承継成功の鍵となる人事評価制度

あしたのチームが「家族経営の会社に勤務し、社長が変わった経験がある従業員」を対象に行った調査で、事業承継前後の変化について聞くと、「離職者が増えた」(25.0%)、「待遇(給与や福利厚生など)が悪くなった」(24.0%)、「社内の風通しが悪くなった」(15.0%)という結果になった。「IT化(営業ツール導入や管理システム導入)が進んだ」「残業が減った」「社内の風通しが良くなった」(9.0%)、「待遇(給与や福利厚生など)が良くなった」(8.0%)というポジティブな結果もあるが、全体としてはネガティブな変化の方が多くなっている。このことから事業承継を検討している企業にとって、従業員に対する配慮も大きな課題となることがわかる。

特に、働き方改革の気運も高まっていることから、従業員にとって働く環境や報酬を判断する目も厳しくなっている。そこで、成果を正当に判断し、労使双方が納得する評価と報酬のための人事評価制度について、経営者の関心が高まっているのだ。あしたのチームの同調査によると、後任(会社の跡継ぎ)が未定の会社経営者のうち、すでに自社で人事評価制度を運用している経営者の約7割が、事業承継を成功させるために人事評価制度の刷新が必要だと答えた。従業員に対し説明責任を果たせる制度を持たないと、先代とのやり方の違いを論理的に示すことは困難である。労使紛争も激化しており、特に経営者と従業員の距離が近い中小企業においては、人事評価制度は企業防衛にもなる施策なのだ。

おわりに

人事評価制度の重要性に気づき制度の整備をしても、それはやっとスタート地点に立ったに過ぎない。正しい運用を持って初めてそれは意味を成す。制度を本当に企業に根付かせるには、経営者が徹底して旗振り役となることが何より必要となる。

今後も、休廃業の流れは加速していくだろう。生き残る企業になるために、今こそ”人”への投資に目を向けるべき時なのではないだろうか。